結論と「優秀」と言える3つの理由
「ドッグフードに穀物が入っているとよくない?」という疑問について、ペットフード安全管理者のうり姉が解説します。
ペットフード販売士の資格も持っています
結論から言うと、穀物にアレルギーを示す子は避けた方がいいですが、そうでなければ穀物はとってもすぐれた栄養源です。
加工・精製技術の進歩が追い風に
穀物がワンちゃんにとってよくないと言われるのは、「消化性の悪さ」が一つの理由です。
消化性が悪いということは、栄養をうまくとりこめないということ。
「消化性が悪い=栄養不足になる」というのが、マイナスイメージにつながっていると言えます。
ですが、細かく砕いて粉にしたものであれば、栄養素はきちんと消化されて体に取り込めるので大丈夫です。
もちろん、植物性タンパク質が動物性タンパク質に比べて消化しにくいということは、噓ではありません。
(かつては「ペットフードの原材料には、動物性タンパク質の方が適任」と言われていました)
ですが、加工・精製技術が進んだ今日では、動物性タンパク質以上の消化性を持つ植物性タンパク質が存在しています。
現代の技術で穀物の課題をクリアです!
例えば、生のチキンとコーングルテン。
出典:ヘルスニュートリションラーニングプログラム・フードの原材料|ロイヤルカナン
生のチキンは、約70%が水分です。
皮や骨を含んでいることから、消化率は80~85%くらいと言われています。
一方、コーングルテンは「コーンからとり出したグルテン」で、ほぼ純粋なタンパク質。
なので、植物性ですがワンちゃんにとっても消化性が高く、品質がいいと消化率が90%を超えてきます。
消化率って、動物性より植物性のタンパク質源の方が高い場合もあるのね…!
穀物メインのドッグフードを悪く言う風潮がありますが、ちょっと待った!なんです
デンプンのα化で良質なエネルギー源へ
穀物にはデンプンが含まれていますが、そのデンプンはドッグフードの製造工程で「α化(アルファか)」されています。
デンプンのα化とは、デンプンの構造が消化されやすい構造に変わること。
具体的には、水と一緒に加熱して、デンプンをのり状に調理します
例えば、お米です。
人間もそのままのお米は消化しにくいですが、水と加熱でのり状にする(=炊飯器で炊く)ことで、おいしく食べられるようになります。
お米を炊飯器で炊くと、もちもちになりますよね。これがα化です
それと同じように、ドッグフードの穀物もワンちゃんが消化しやすいように調理されています。
デンプンのα化で消化しやすくなっているから、いいエネルギー源として利用させてもらってるよ~
ちなみに、冷やご飯の状態をβ化(ベータか)と言います。
消化率が下がっている(=栄養を吸収しにくい)ので、ダイエット食にうってつけだそうです(笑
ワンちゃんは“雑食動物”
「ワンちゃんは肉食だから、穀物よりお肉の方がいいんじゃないの?」という声もあります。
ですが、ワンちゃんは完全な肉食動物ではありません。
肉食に近い“雑食動物”で、動物性の食べ物を摂取しなくても生きていける体のつくりになっています。
肉食の傾向はあるけれど、あくまで雑食動物なんだ
お肉も食べるけど、野菜や木の実、果物なんかも食べていたのよ
「肉食動物だからお肉がいい」という理由で穀物を遠ざけていた人は、穀物も立派な栄養源なので、安心してください。
大切なのは、必要な栄養素をきちんと体内にとりこむこと。それができるなら、動物性か植物性かはそこまで重要じゃありません!
グレイン・グルテンについて
「グレインフリー」「グルテンフリー」という言葉をよく見かけるようになりました。
ざっくり説明すると、グレインは「穀物」、グルテンは「(穀物からとり出した)タンパク質」です。
一言で | 詳しく言うと | |
---|---|---|
グレイン | 穀物 | 主にイネ科植物(米、麦、トウモロコシ、キビ)の種子のこと。広義の意味では豆類も含む |
グルテン | タンパク質 | 穀物(グレイン)からとり出した、ほぼ純粋なタンパク質。主に麦から抽出 |
なので、グレインフリーは表に書いてあるような「穀物不使用」ということになりますが、グルテンフリーは「(穀物からとり出した)タンパク質不使用」ということになります。
グレインとグルテン、名前は似ていますが意味は違っているので、ドッグフードを選ぶときは注意してください
穀物と食物アレルギーの関係
「穀物アレルギー」という観点から、グレインフリーやグルテンフリーのドッグフードが注目されつつあります。
ただ、食物アレルギーを引き起こすアレルゲン(アレルギーの原因になる成分)はタンパク質がほとんどと言われていて、穀物は比較的少ないということが報告されています。
穀物でアレルギーを起こす子はゼロというわけではありませんが、「穀物が食物アレルギーの根源」という認識は、あまり正しくなさそうです。
過度な穀物批判にだまされないようにしてくださいね
食物アレルギーの参考情報
参考として、食物アレルギーに関する情報をまとめておきます。
「そもそもうちの子は食物アレルギーなのかな?」ということが気になる人もいると思うので、判断材料として特徴を書いておきます
ただ、うり姉は獣医師ではないから、ちゃんとしたことは獣医師さんに聞くのが一番よ
まず、食物アレルギーの炎症が出やすい場所と特徴を説明します。
食物アレルギーの炎症が出やすい場所
出典:ヘルスニュートリションラーニングプログラム・皮膚疾患|ロイヤルカナン
目や口、肛門周りに炎症が見られる場合は、特に食物アレルギーの疑いが強いそうです
- 最初の発症が1歳未満であることが多い
- 季節によって症状が変化することはない
- 1日の排便回数が増えることがある
1歳未満から発症しているアレルギーの約60%は、食物アレルギーだと言われているようです
ただ、炎症があるからといって、食物アレルギーに決まるわけではありません。
ほかにも「犬アトピー性皮膚炎」というものがあって、似たような場所で炎症が見られることもあります。
犬アトピー性皮膚炎の炎症が出やすい場所
出典:ヘルスニュートリションラーニングプログラム・皮膚疾患|ロイヤルカナン
外耳、指の間が食物アレルギーと重複しているね
犬アトピー性皮膚炎は、ハウスダストなどが原因になります。
環境中のアレルゲンによるものなので、季節が症状に影響する場合があります
季節によって症状が変わる・変わらないところが、食物アレルギーとの違いと言えそうね
このように、炎症が出ていても食物アレルギーとは限りません。
独断ではなく、獣医師さんに相談して原因を探りましょう
ちなみに、食物アレルギーは「低アレルギー食と水」という食事管理で、なかなかつらいものがあります。。。
口にするものにアレルゲンが入っているといけないので、おやつなんかもひかえないといけないんです
まちがった判断でワンちゃんにつらい食事管理を…なんてことにはなりたくないので、そういった意味でも獣医師さんに相談するのが適切です。
消化の良さはうんちでチェック
「ワンちゃんにとって大事なのは、消化のよさ!」とさんざん言いましたが、パッケージを見てもそれが正確にわかるわけではありません(涙
同じ原材料でも、ぶっちゃけ品質で消化性に違いが出たりもします
ドッグフードの消化の良し悪しを知るには、ワンちゃんのうんちをチェックします。
適切な固さで量が少なければ、消化性が高い証拠と言えます。
量が少ないってことは、それだけしっかり消化して栄養を吸収してるってことなんだよ
うんちはワンちゃんからの体内レターです!
ドッグフードの原材料の見方をペットフード販売士・ペットフード安全管理者のうり姉がわかりやすく解説しています。原材料・添加物の意味を一覧化し、体に悪いと危険視されがちな成分の真相にも迫ります。原材料の見方を知って、安全なドッグフードを選びましょう。