危険視されがちな添加物一覧
「この添加物は良くない」「これが入っていたら危険」とよく言われているのは、次の4つです。
添加物 | 用 途 | 影 響 |
---|---|---|
エトキシキン | 酸化防止剤 | ドライ・セミモイストタイプフードで使用。過剰摂取で腎臓に影響を及ぼす報告あり |
BHA (ブチルヒドロキシアニソール) |
酸化防止剤 | ドライ・セミモイストタイプフードで使用。過剰摂取でラットの前胃で過形成(犬猫にはない) |
BHT (ジブチルヒドロキシトルエン) |
酸化防止剤 | ドライ・セミモイストタイプフードで使用。高濃度で与えた犬に下痢の症状 |
亜硝酸ナトリウム | 発色剤 | ウエット・セミモイストタイプフードで使用。犬猫が高濃度摂取でチアノーゼを引き起こす可能性 |
豆知識1:上記酸化防止剤を使わないフード
エトキシキン・BHA・BHTは、ウェットフードには入っていません。
これらの添加物がどうこうというより、そもそもウェットフードに酸化防止剤を使うことが通常ないからです。
豆知識2:亜硝酸ナトリウムの海外での区分
日本では「発色剤」として主に用いられますが、欧州や米国では「保存料」に区分されています。
「危険な添加物」の真偽をジャッジ
このような添加物が使われていると、「危険なドッグフード」と批判する声があります。
本当に危険なのか、だったらどうして売られているのか、真相に迫ります。
使用量が省令で定められている
上記添加物には、国が定める成分規格があります。
農林水産省・環境省の「愛玩動物用飼料の成分規格等に関する省令」によって、使える上限がしっかり制限されています。
犬用・猫用のペットフードが対象です
決してでたらめな量が使われているわけではないの
このような添加物が使われているだけで「危険なドッグフードだ!」と決めつけてしまうのは、あまりいい判断とは言えない気がします
健康被害は今のところなし
エトキシキン・BHA・BHTの酸化防止剤について、諸外国でも規制があります。
下記は、日本・欧州・米国の酸化防止剤(エトキシキン・BHA・BHT)の規制状況を比較した表です
日 本 | 欧 州 | 米 国 | |
---|---|---|---|
三成分の合計量 | 150 | 150 | 200 |
エトキシキン単独 | 犬用:75 | 犬用:100 | 150(※) |
(単位:mg/kg)
※FDAは自主的に75mg/kg以下にするよう事業者に要請
日本が一番厳しめなんだね
ワンちゃんはエトキシキンの感受性が高いと考えられているので、エトキシキン単独でワンちゃん用に規制があります
基準を満たしたペットフードにおいて、今のところ健康被害の報告は出ていません。
BHA・BHTは食品添加物でもある
「危険な添加物」の代名詞のように、BHAとBHTは特に嫌がられやすい傾向があります。
合成の酸化防止剤なので、確かにいい印象は持ちづらいですよね。
ですが、BHAとBHTは、食品添加物としても指定されているものです。
対象の食品 | |
---|---|
BHA | 油脂、バター、魚介乾製品、魚介塩蔵品、乾燥裏ごしいも、魚介冷凍品、鯨肉冷凍品 |
BHT | 油脂、バター、魚介乾製品、魚介塩蔵品、乾燥裏ごしいも、魚介冷凍品、鯨肉冷凍品、チューインガム |
私たちの食べ物にも使われているんですね
福祉保健局の食品安全情報サイトにも、しっかり明記されているわ
追記
上記サイトに、亜硝酸ナトリウムも食品添加物として名前が載っていました。
実際、肉製品やハム・ソーセージなどに広く使われています。
対象の食品 | |
---|---|
亜硝酸ナトリウム | ハム・ソーセージなどの食肉製品、鯨肉ベーコン、魚肉ハム・ソーセージ、いくら、すじこ、たらこ |
実はとっても身近なんだね~
人間が食べるものにも使われている。そう思うと、不安がやわらぐ気がしませんか?
【結論】むやみな危険視はナンセンス
- 国が含有量の基準を定めている
- 健康被害の報告なし
- 食品添加物の一面がある
この状況から、上記添加物が使われているドッグフードを食べても問題ないということがわかります。
天然志向が強まっていることもあって、だいぶこれらの添加物を見なくなった気はします。
それでも、まだまだ出番があるのは事実。
お気に入りのドッグフードに該当する添加物があっても、こわがりすぎる必要はありません。
そもそも禁止されているわけではないのよね
だったら、僕たちがぱくぱく食べられるのが一番!
メーカーの人が徹底してつくっていますよ。安心してください!
ほかに成分規格が定められているもの
エトキシキン・BHA・BHT・亜硝酸ナトリウム以外にも、基準値が定められているものがあります。
ただ、これらは添加物のように後から加えられるというより、原材料の段階で入っていることが多いです。
エトキシキン・BHA・BHT・亜硝酸ナトリウムは添加物なので、製造時に加えられるものです
添加物ではないので、ドッグフードの原材料名に出てくるわけではありませんが、参考としてまとめておきます。
分 類 | 物質等 | 備 考 |
---|---|---|
かび毒 | アフラトキシンB1 | とうもろこし由来の原材料にリスク高 |
デオキシニバレノール | ||
有機リン系農薬 | グリホサート | 穀類、野菜類、果実類に残留のリスク |
クロルピリホスメチル | ||
ピリミホスメチル | ||
マラチオン | ||
メタミドホス | ||
重金属等 | カドミウム | もともと天然に広く分布しているが、高濃度で摂取し続けると健康被害を引き起こすリスク |
鉛 | ||
ひ素 | ||
有機塩素系化合物 | BHC (α-BHC、β-BHC、γ-BHC及びδ-BHCの総和) |
過去に殺虫剤や農薬として使用。すでに国際的に使用禁止だが分解されず残留 |
DDT (DDD及びDDEを含む) |
||
アルドリン及びディルドリン(総和) | ||
エンドリン | ||
ヘプタクロル及びヘプタクロルエポキシド(総和) | ||
その他 | メラミン | 中国産原料に混入し健康被害が出た(ペットフード安全法の発端) |
原材料に混入したり汚染されていないか、メーカーは細心の注意をはらわなくちゃいけないの
見えないところでたくさん努力してくれているんだね…!
それでも天然由来がいい人
酸化防止剤の話になりますが、もちろん天然のものもあります。
たとえば、ローズマリー抽出物です。
トコフェロールもよく見かけます。
ミックストコフェロールというのもあるけど、これは4種類のトコフェロールを混ぜていますってことなんだ
トコフェロールはビタミンEなんですよ
ドッグフードのビタミンについて、ペットフード安全管理者・ペットフード販売士のうり姉が、役割や必要性をわかりやすく解説します。ドッグフードの原材料名にはビタミン類と書かれていることが多く、添加物として使われる意味を知って安心して食べてもらいましょう!
正しい知識で偏見をなくそう(執筆者について)
かくいううり姉も、“添加物”と聞いてネガティブなイメージを持たないこともありませんでした(汗
ですが、ペットフードに関する資格や講義を通じて「感情が健康をさまたげることもあるんだ」ということを学び、飼い主自身が正しい知識をつけることの重要性を知りました。
私たちが頼れるのは、飼い主のアナタだけなの
この記事は、主にペットフード安全管理者で学んだ知識をベースに執筆しています。
10個以上ペット関連資格を取得していますが、危険な添加物の真相を知る上で一番ためになったのは、ペットフード安全管理者の講習でした。
内容が本格的な分、参加者はペット関係の企業の人が多かったよ
「若干浮いてない?」とドキドキしましたが、有益な情報をたくさん得られました
もちろん問題なく受講できたわよ
ペットフード安全管理者の概要をまとめています。勉強や講習会の内容、申し込み方法など実体験をもとに詳しく説明しています。ペットフード業界やペットフードの舞台裏に触れる貴重な資格なので、検討している人は参考にしてみてください!
また、ペットフードを“売る側”の知識を学ぶ「ペットフード販売士」も有力です。
本やネットではどうしても限界があるので、名だたるペットフードメーカーやお国の人が講師になる講習は、本当に有意義です。
ペットフード販売士の資格について、わかりやすく概要をまとめています。学べる内容、申し込み方法、講習会や問題の難易度などを実体験をもとに説明しています。販売者というペットフードの売り手としてはもちろん、飼い主としてもタメになる知識をたくさん得られる資格です。