定義から知るドッグフードの構成
ドッグフードは何からできているかというと、むちゃくちゃシンプルです。
ペットフードの定義を明らかにしている『ペットフードの表示に関する公正競争規約(ペットフード公正取引協議会)』によると、
「ペットフード」とは、穀類、いも類、でん粉類、糖類、種実類、豆類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類、魚介類、肉類、卵類、乳類、油脂類、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類、その他の添加物等を原材料とし、混合機、蒸煮機、成型機、乾燥機、加熱殺菌機、冷凍機等を使用して製造したもの、又は天日干し等簡易な方法により製造したもので、一般消費者向けに容器に入れられた又は包装されたもので、犬の飲食に供するもの又は猫の飲食に供するものをいう。
という風に、ペットフードは定義されています。
つまり、穀類やお肉、魚、野菜などと添加物を材料としてつくった、ワンちゃん・猫ちゃん用のごはんがペットフードということです。
それじゃあ、ドッグフードってもろもろの食材と添加物だけで構成されてるってこと?
とってもシンプルですし、人間が口にするものと変わらない?って思いました
ドッグフードの原材料を読み解こう
「ドッグフードは何からつくられているの?」と言ったら、次の2つです。
- 原材料(様々な食材)
- 添加物
パッケージの原材料欄を見るとたくさんの成分名が載っていますが、ざっくり言えばたった2分類での構成です。
食材になるのはどんなものなのか、添加物はどんなものが使われるのか、それぞれ解説します。
原材料名は、使用量の多い順で書かれていることが多いですよ~
【一覧】ペットフードに使われる原材料
ペットフードに使われる食材を、一覧にまとめました。
見慣れない名前の原材料が使われることもあるけど、どこかの分類に当てはまるはずよ
分類名 | 個別名 |
---|---|
穀類 | とうもろこし、マイロ、小麦、大麦、玄米、エン麦、小麦粉、パン粉、米粉、コーンフラワー、オートミールなど |
でんぷん類 | コーンスターチ、ポテトスターチ、タピオカ(キャッサバ)スターチ、さつまいも、じゃがいも、こんにゃくなど |
糟糠(そうこう)類 | 米ぬか、小麦ふすま、小麦胚芽、大麦ぬか、グルテンフィードなど |
糖類 | 砂糖、ぶどう糖(グルコース)、果糖(フラクトース)、異性化糖、オリゴ糖類、水飴、シロップ、糖蜜、はちみつなど |
油脂類 | 動物性油脂〔牛脂(タロー)、豚脂(ラード)、鶏脂(チキンオイル)、魚油(フィッシュオイル)、バター、脂身など〕、植物性油脂〔大豆油、ごま油、胚芽油、綿実油、パーム油、マーガリンなど〕、脂肪酸〔リノール酸、リノレン酸、高度不飽和脂肪酸など〕 |
種実類 | アーモンド、くり、ゴマ、落花生など |
豆類 | 大豆、脱脂大豆、大豆ミール、きなこ、大豆粉(ソイフラワー)、おから、そら豆、小豆など |
魚介類 | まぐろ、かつお、あじ、いわし、えび、かに、たこ、いか、ほたて、さざえ、フィッシュミール(魚粉)、フィッシュエキスなど |
肉類 | 牛(ビーフ)、豚(ポーク)、羊(マトンまたはラム)、鶏(チキン)、七面鳥(ターキー)、うずら、ミートミール、ミートボーンミール、チキンミールなど |
卵類 | 鶏卵(全卵、乾燥全卵、卵黄・卵白)、あひる卵、うずら卵など |
乳類 | 全脂乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエー、チーズ、バター、クリームなど |
野菜類 | にんじん、キャベツ、グリーンピース、かぼちゃなど |
植物たん白 エキス |
大豆たん白、小麦たん白、グルテンミールなど |
果実類 | アボカド、りんご、バナナ、パイナップル、パッションフルーツなど |
きのこ類 | マッシュルーム、えのき、しいたけ、しめじなど |
藻類 | のり、こんぶ、わかめ、ひじき、クロレラ、スピルリナ、寒天、カラギーナンなど |
その他 | 酵母、牧草、セルロース類、酸類など |
人間の料理のレシピを見ているような、身近な食べ物も多いんですね~
【一覧】ペットフードに使われる添加物
添加物とは、「期待される効果を得るために、製造時に意図的に使うもの」です。
一言で「添加物」と言っても用途も名前もたくさんあるので、ペットフードの製造に使われる代表的な添加物を中心に一覧化しました。
パッケージの原材料欄とにらめっこしながら、当てはまる添加物を探してみてね
分類・目的 | 個別名 |
---|---|
栄養添加物 | ビタミン類(細かい種類はこちら)、ミネラル類、アミノ酸類(細かい種類はこちら) |
保湿剤 | グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール |
pH調整剤 | クエン酸、リンゴ酸、乳酸ナトリウム |
保存料 | ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム |
酸化防止剤 | エトキシキン、BHA、BHT、ミックストコフェロール、ローズマリー抽出物 |
乳化剤 | グリセリン脂肪酸エステル、レシチン |
着色料 | カラメル色素、酸化鉄、二酸化チタン、食用赤色3号 |
発色剤 | 亜硝酸ナトリウム |
増粘安定剤 | デンプン、カラギナン、グァーガム、増粘多糖類 |
膨脹剤 | 焼ミョウバン、炭酸水素ナトリウム |
甘味料 | D-ソルビトール、ステビア抽出物 |
酵素 | α-アミラーゼ |
酸味料 | クエン酸、コハク酸 |
調味料 | L-グルタミン酸ナトリウム、5’-イノシン酸二ナトリウム |
個人的には、ビタミンやミネラル、アミノ酸が添加物のカテゴリーになるのが意外でした
ドッグフードのビタミンについて、ペットフード安全管理者・ペットフード販売士のうり姉が、役割や必要性をわかりやすく解説します。ドッグフードの原材料名にはビタミン類と書かれていることが多く、添加物として使われる意味を知って安心して食べてもらいましょう!
ドッグフードの添加物であるアミノ酸について、役割から必要性をペットフード販売士・ペットフード安全管理者の資格を持つうり姉がわかりやすく解説します。必須アミノ酸の種類や豊富な食べ物、ドッグフードの原材料名によく登場するアミノ酸もピックアップです。
見方のプラスアルファ情報
原材料・添加物の基本情報に加えて、気になる情報や耳寄り話をまとめます。
体に悪いと言われがちな添加物
「よくない成分だ!」とか「危険」と言われがちな添加物は、次の4つです。
添加物 | 備 考 |
---|---|
エトキシキン | 合成の酸化防止剤。ドライ・セミモイストタイプで使用。過剰摂取で腎臓に影響を及ぼす報告あり |
BHA (ブチルヒドロキシアニソール) |
合成の酸化防止剤。ドライ・セミモイストタイプで使用。過剰摂取でラットの前胃で過形成(犬猫にはない) |
BHT (ジブチルヒドロキシトルエン) |
合成の酸化防止剤。ドライ・セミモイストタイプで使用。高濃度で与えた犬に下痢の症状 |
亜硝酸ナトリウム | 発色剤(欧州や米国では「保存料」の区分)。ウエット・セミモイストタイプで使用。犬猫が高濃度摂取でチアノーゼを引き起こす可能性 |
ただ、「これらが使われている=あげちゃダメ」ではありません。
危険と言われがちなドッグフードの添加物について、ペットフード関連資格を持つうり姉が、わかりやすく解説します。国の対策や健康被害の有無を知って、安心につなげてほしいです。大丈夫と言える根拠と一緒に、危険視されるドッグフードの添加物の真相に迫ります。
国が使用上限をしっかり定めていること、さらに基準を守るペットフードにおいて健康被害は今のところ出ていないからです。
食品添加物として使われているものもあるんですよ
いいか悪いかで言えば「よくない成分」かもしれませんが、健康を害しないことをモットーに国もメーカーも考えています。
マイナスイメージがひとり歩きしている面が強いので、心配しすぎなくて大丈夫です。
というか、塩だって多すぎれば害になるんです。添加物どうこう以前に「量」が安全のカギになりそうですね
優秀な「粕」「糟」「屑」
原材料を見ていると、粕(かす)・糟(かす)・屑(くず)がついた原料が登場することがあります。
「大豆粕」や「豆腐粕」、「パン屑」なんかがあるわ
「かす」や「くず」という言葉がつくと、残り物だったり栄養価が低そうな感じがしますが、実際はそうではありません。
名前はアレですが、機能面で優秀さが見直されていて、下痢や軟便をおさえたり、肥満防止に役立つことなどがわかっています。
また、「言葉のイメージで誤解されちゃもったいないよね」ということで、
- 大豆粕→大豆ミール、脱脂大豆
- 豆腐粕→おから
こんな風に名称が工夫されたりしています。
ペットフードにおいて頼もしい存在なので、「粕」や「屑」という言葉がついていても、安心してくださいね。
よく使われている原材料と添加物
原材料名によく登場する原材料・添加物をピックアップしました。
○○ミール
残った部分を乾燥、加工処理した粉末状のものです。
- チキンミール:鶏を原料とした乾燥粉末
- コーングルテンミール:コーンから取り出したタンパク質を粉末状にしたもの
コーングルテンとは、コーンから取り出したタンパク質のことです
ほぼ純粋なタンパク質で、ドッグフードのたんぱく源(植物性)になるよ~!
ビートパルプ
食物繊維源です。
砂糖大根を絞った後のやつです
つまり、砂糖大根の絞りかすってことね
ミックストコフェロール
ビタミンEで酸化防止剤です。
4種類のトコフェロールを混ぜています。
ローズマリー抽出物
酸化防止剤です。
ローズマリーから抽出している自然派成分です。
パントテン酸
ビタミンB群の一つです。
皮膚を乾燥から守ってくれる、皮膚疾患の味方な栄養素です。
コリン
ビタミンB群の一つです。
パントテン酸と同じく、皮膚のバリア機能維持に必要です。
メチオニン
必須アミノ酸の一つです。
被毛の材料になる「シスチン」のもとなので、被毛の健康や毛並みの美しさに大切です。
L-カルニチン
アミノ酸の一つで、脂肪を効率的に燃焼するのに必要です。
体重管理用のドッグフードには、大抵これが使われていると思います
4商品の原材料を翻訳してみた
上記一覧を使って、実際に4つのドッグフードの原材料を翻訳してみました。
人気の3商品と、うちの子が食べているドッグフードです。
見方がわかると材料のシンプルさがわかるので、もっと安心することができます♪
アイムス
原材料は、以下の通りです。
わかりやすく言い換えると、こんな感じになります。
基本的には自然のものが多い印象ですが、酸化防止剤にBHA・BHTといった合成のものが使われています
使われるのは健康に害がない範囲だし食品添加物としても指定されているからダメではないんだけど、オール自然派がいい人は惜しい!ってなるわね
シュプレモ
出典:製品一覧|シュプレモ
原材料に野菜や果物が多く登場するドッグフードです。
実は、うちの子のごはん買い替えの際、最後まで有力候補に残っていたドッグフードでした。
原材料がもともと食べていたドッグフードに近かったんだ~
ドッグフードの買い替えに迷ったら、栄養成分があまり違わないものを選ぶのも手です
内容はこんな感じです。
わかりやすく翻訳すると、こうなります。
原材料も安心できるので魅力的でしたが、購入ルートに不便な点があったので、一旦はずしました
愛犬元気
愛犬元気の原材料はこちらです。
わかりやすく翻訳してみます。
「赤色○号」みたいな着色料が使われているからドキッとしたけど、一応食用のものなんだね
そのあたりはメーカーさんがちゃんとしてくれていると思います。ただ、ワンちゃんにとって色づけはそこまで重要ではないと思うので、人間が見て「かわいい」と思うための着色料ではないでしょうか
森乳サンワールド
うちの子が食べているドッグフードです。
森乳さんのおかしが大好きなの!
きっとごはんも気に入ってくれるんじゃないかと思い、目をつけていました
原材料は、こんな感じです。
翻訳してみます。
体に悪いものはなさそう!よかった~
愛用していたドッグフードが日本から撤退。。。成分的にもいい感じだったので、今は森乳さんを食べています
おわりに(執筆者について)
この記事は、ペットフード販売士・ペットフード安全管理者の資格取得を通じて学んだ知識をベースに執筆しています。
ほかにも様々なペット関連資格を持っていますが、ドッグフードの成分や栄養に関することで特に役に立ったのは、この2つの資格です。
ペットフード販売士の資格について、わかりやすく概要をまとめています。学べる内容、申し込み方法、講習会や問題の難易度などを実体験をもとに説明しています。販売者というペットフードの売り手としてはもちろん、飼い主としてもタメになる知識をたくさん得られる資格です。
ペットフード安全管理者の概要をまとめています。勉強や講習会の内容、申し込み方法など実体験をもとに詳しく説明しています。ペットフード業界やペットフードの舞台裏に触れる貴重な資格なので、検討している人は参考にしてみてください!
ただね、獣医さんではないの…
あくまで参考としてお役に立てると嬉しいです